この間の土曜日、演劇の公演に行ってまいりました。
ふだん私はだいたい東京で舞台に出てるんですよね。
主に銀座のMAMEHICOというカフェの中で演劇、お芝居をやっているんですけど、今回は神戸に行って公演してきたんですね。
僕が日頃お世話になって、いつも演劇とかやらせてもらっているMAMEHICOが、銀座だけじゃなくて神戸にもお店があるんですね。
神戸の御影というところにお店があって、そこで公演をするっていうことで、金曜日、仕事が終わった後に新幹線に乗って、翌日土曜日の朝、ちょっとリハーサルみたいなことして、本番やって、そのまま夜、東京に戻ってきたみたいな、そういう感じですね。
僕自身、役者じゃないから全国公演みたいなことをすることはないので、もちろん神戸で公演をすることも初めてだったわけですけれども、やっぱりね、東京と関西でお客さんの感じが全然違うなっていうのは思いましたね。
僕がふだん東京でやっているお芝居自体がそんなにメジャーなものでもないし、「これぞ東京のお芝居」みたいなところでもないからね。
そもそもカフェでやってるし。
だから東京はこう、大阪はこう、名古屋はこう、みたいなことでは僕は語れるわけではないけれども。
とはいえね、お客さんの感じがすごい違ったのが印象的でしたね。
なんていうんだろうな、雰囲気として。
演劇を見てるだけだから、お客さんがしゃべったりとかってこともないし、ただただ見ているんだけれども、雰囲気として神戸のお客さんの方が積極的に、この演劇という催し物に関わろうっていうムードみたいなものを感じたんですよね。
東京ももちろんそういうのってあるんですけど。
映画なんかと違って生物なので、生身の体でやるので、双方向性というか、お互いに関わり合ってひとつの演劇が仕上がっていくみたいな要素はあるんだけれども、神戸の方がそれがより強いような気がしました。
もともと観劇っていうのはさ、映画を見るとか、音楽のライブを聴きに行くとかもそうだけど、受動的な行為であるっていうことはあると思うんですけど、その中で一定の積極性ってあるじゃないですか。
ライブだとさ、盛り上がって拍手をするとか、コールアンドレスポンスをするとかさ、そういう能動的な具合っていうのがね、東京の方が薄い感じがしますね。
僕も神戸で一回やっただけだから、紋切り型に切り分けるのもあれですけど、印象としてそういう感じがしました。
そういったことを考えた時に、東京と大阪って風土が全然違うんだろうなっていうのをね、すごい思いましたね。
もともと東京ってさ、やっぱり日本の経済の心臓なわけですよね。
将軍のお膝元だっけ。
殿様のお膝元だっけ。
とにかく、東京は東京で経済を回している。
東京の中で経済を回しているというよりは、東京で全国、日本全体の経済を回しているみたいなところがあって、僕、法人営業だからすごいそれを感じるんですけど、東京は本社っていうのが多いわけですよね。
東京には会社の本社があって、あちこち地方にその支社とか支店みたいなものがあって。
たとえばメーカーであれば、日本にだけにとどまらず、海外にも輸出するような製品を作ってて、だから東京で製品を作っているっていうよりは、東京では企画立案とか総務の機能とかそういったものがあって、生産工場はもうちょっと地方であったりとか、海外とかにあったりするわけですよね。
だから、東京ってそもそもが客商売の街じゃないんだろうなっていうのはすごい感じますね。
もちろん、東京に人がいっぱい住んでいるので、東京に住んでいる人をターゲットにした飲食店とかお洋服屋さんとか、そういったものはいっぱいあるにしても、東京という街のムードとかマインドっていうのは、うーん、なんだろうな。
「本社機能の街」っていうところのマインドが染みついてるんだろうなって感じがするんですね。
一方で関西と比べてみた時に、関西って「天下の台所」って言われるように、商いの街じゃないですか。
僕、大阪にあんまり行かないから、あんまり大阪を語りたくはないんだけれども。
商いの町っていうのは顔と顔を突き合わせて、人と関わり合って物の売り買いをしている。
直接物を手に取ってもらって、お金をもらって交換するっていう行為が目の前で行われていた街なんだと思うんですよね。
もちろん、今となってはインターネットが普及してそうとも限らないですよ。
大阪だとたくさん売れて、っていうことでもないわけじゃないですか。
大阪の人だってamazonとか楽天とかさ、そういうのでものを買いうことの方が多いのかもしれないけど、そもそも歴史的な背景として商いの町であるっていうのが、関西には根っことしてあるんだろうなっていうふうに思うんですね。
僕はずっと東京に住んでるんですけれども、すごい感じるのは、東京の方が、働いているときとオフの切り替えがはっきりしている。
働いているときと余暇を過ごしているとき。
働いているときは、自分はお金をもらっているんだから、サービス提供者として振る舞いますよ。
でも、自分が余暇を過ごしているときは、自分はお客さんなんだから、サービスを受ける側の立場として振る舞いますよっていうのがはっきりと線引きされてるんだと思うんですよね。
これはたぶん、客商売をする街ではもともとなかったからなんじゃないかなっていうふうに思うんです。
現代となっては別にどっちとも言えないんですよ。
東京には東京の商いというか商圏があって、大阪には大阪の商圏があるし、大阪にも本社機能がたくさんあるからそんなはっきりとした住み分けはないんだけど、文化としてもともとそういうのが根付いてたんじゃないかなっていうふうに思うんですよ。
さっきの演劇の話に戻ると、自分は演劇を消費者として見に来ているんだっていう感覚が、やっぱり東京の方が強い気がしますね。
特に僕らなんかはさ、ちょっと得体の知れないものをやっているわけですよ。
大ヒットのさ、「スター・ウォーズ」シリーズみたいな、誰でもわかっているようなものではなくて、なんでこんな銀座のビルの10階にカフェがあって、そんなところで演劇やってるんだろうみたいなことなわけですよ。
そこに誰かに誘われてやってきた時に、(観劇の)姿勢としては「どれどれ、ここでどういったことがやっているのか、ちょっと見てやろう」みたいな。
いわゆる値付けみたいな、自分は一歩後ろに下がってお手並みを拝見しようみたいな感じが、消費者意識として東京は強く出やすいんじゃないかなっていうふうに、僕はなんとなくね、出役として舞台の上に立ってて感じていて。
一方で、神戸で公演した時に感じたのは、せっかく来たんだからみんなでこの場をいい場にしていこうじゃないかみたいな、良く言うとそういうようなムードがあって。
せっかく来たんだから、一歩後ろに下がるんじゃなくて、一歩前に出て、この得体の知れないものと関わってみようじゃないかっていうのが、なんかあるような気がしますね。
商いでモノを売るっていうのも積極的に誰かと関わらないと売れないし、お客さんであっても積極的に「これください」とか、「ちょっとまけてもらえませんか」とかってさ。
で、感じ悪かったらまけてもらえないわけじゃないですか。
そういったところで、やっぱり東京に比べて生産者と消費者の境目がちょっと薄めなんじゃないかなって。
だから僕らみたいなね、MAMEHICOっていうカフェでやる演劇についても「これからなにが起こるのかよくわからないけど、今日はぜひ楽しんでいきましょう」みたいな気持ちの人がね、多いような気がしましたね。
演劇って収録ではないので、その場の雰囲気にめちゃくちゃ左右されるんですよね。
全体のストーリーはもちろん変わらないし、セリフも変わらなくても、その場がどういう雰囲気の場所であったかっていうことによってお芝居はものすごく影響を受ける。
その影響が、今回の演劇を東京でやった時とはかなり違うものにしたなっていう感じがしましたね。
結果的にはね、好評だったか不評だったかって、やった側からはちゃんとはわからないんだけど、肌感覚としてはものすごく良かったんじゃないかな、刺さってくれたんじゃないかなって感じはしましたね。
泣いてくれてた人もけっこういて、最後のシーンなんか、すすり泣く音がそこかしこで聞こえる中でラストシーンを演じるみたいな、そんなこともあったので。
積極的に関わってもらったことによって、舞台がよりドラマチックなものになって。
感情を受け取ってもらうことができて、泣いてもらうことができたみたいな、そういったことかな、なんていうふうに思いましたね。
だから、演劇って面白いですね。
僕もずっと東京でばっかり演劇やってたけど、あちこちでやってるとその場その場の風土があって、演劇の質っていうのも変わっていくんだろうなって思うので、機会があったらね、もっとあっちこっちで演劇してみたいなとは思いますけどね。
僕はね、役者ってわけじゃないのでね、いちサラリーマンであり、いち営業マンが、こうやっていろんなところでお芝居やらせてもらってるっていうのは、すごいありがたいことだなっていうのをね、つくづく感じましたね。
というわけでね、これを聞いていただいてる方がどちらにお住まいかっていうのを私は存じ上げませんけれども、神戸の御影では、また7月にやるのかな。
今年中にもう1回公演しようっていうことにもなってますし、銀座でも公演が決まっているので、よかったら一回見に来てもらえたらなっていうふうに思います。
最近、娯楽が多いのでね。
NETFLIXとかYouTubeとか、いろんなのがあって、手軽にエンタメを享受できる時代ではありますが。
双方向性っていうところで言えば、生でなにかを見るっていうのはね、スマホで得られるエンタメとはまた違ったものがありますので、ぜひぜひ見に来ていただけたらなっていうふうに思います。
はい、では、本日はこんなところで終わりにしようかなと思います。
今回もありがとうございました。バイバイ。