オンライン喫茶 4th place
オンライン喫茶しゃびのオフなひととき(テキスト)

491.目標よりも、自己認識

僕は得意不得意の差が激しい方で、できないことの方が圧倒的に多いんですけど。

今の会社に20年ぐらい勤めてるんですけど、僕がやらかしたミスの数たるや尋常なものではないし、今45歳、もうすぐ6ですけど、今の会社に入った26歳の頃と比較したらずいぶん良くはなったんですけども、入ったばかりの頃とかはほんとにひどくて。

営業職で今の会社に入って、今も営業職やってるんですけど、上司との同行のアポイントを自分だけすっぽかすとか、お客さんと約束したことをそのまま放置して半年ぐらい経過してクレームに合うとかで、これすっかり忘れてるっていうならまだいいんですけど、忘れてないのに先延ばしにして半年経っちゃったりしてるんですよね。
お客さんに「やります」っていう約束を、自分の中で「これとこれをやらなきゃいけないな」っていうのがうまく整理できなくて、今自分がやらなきゃいけない話だとか、やりたいことっていうのを重視してしまって、ちょっと優先度が下がることを、もう尋常じゃなく先延ばしにしちゃうっていうところがあって。
それで、お客さんにクレームをもらったり。
あとはね、車とかそういう乗り物に乗って移動するんですけど、キーをなくしてしまうとかね、自分のじゃないですよ、会社のやつを。
そういうことがね、ものすごいありましたね、もうほんとに。
うん、言えないこともあるかな。
お客さんに書いてもらって、ハンコ押してもらった書類、間違えてシュレッダーしちゃったりね。

そういうことは今ではずいぶん減ってますけど、やっぱりね、人と比べたらね。
なんかポカが多いですね。
この放送でも何回も話してるのかな。
電車はね、ほぼ間違えますね。うん。
だから、そのことでお客さんとのアポイントに遅れちゃったり。
そういうのもあったりね。

良くはなってますよ。
どうすれば自分がそういう間違いをしないかっていうことが、昔よりはずいぶんわかってきたので減ってますけど、やっぱり他の人と比べると、そういったミスを減らすことに大きな努力が必要だし、すごく気を張ってないとミスをなくせない。

ミスがないようにもできるんですよ。
ミスのないようにもできるんですけど、ミスをしないようにするために全力を尽くさないとなくせないんですよね。
要するに、人間って、「同じ人間だ」とくくるのって結構危険で、それってバイクに例えたらハーレーとカブを「同じバイクでしょ」って言ってるようなものなんですよね。

例えば、アメリカの東から西へ横断するのにハーレーで行くっていうんだったらね、長旅になりますね。
なんつって、どのぐらいかかるのか知らないけど。
それを例えば50ccのカブで行こうってなったらしんどいわけじゃないですか。
だってカブって、新聞配達屋さんとかが乗るのに便利なようにめちゃくちゃ小回りよくできてるのに、ただただ真っすぐな道をたいして馬力もないバイクでずっとまっすぐ行くってさ。

それで、「ハーレーと同じバイクだからね」なんて言われても、かかる時間がめっちゃ違うと思うんですよね。
でも逆に新聞配達をハーレーでやれって言ったら、なんだこれって話なわけじゃないですか。
まったくもって小回りが利かなくて、長距離を高い馬力で走るのに適してるのに、右へ左へクネクネ行かなければいけないってなったら、ほぼポンコツなわけじゃないですかね。

でも、趣味で走るときはさ、カブが好きな人もいれば、ハーレーが好きな人もいれば、オフロードのバイクが好きな人もいて。
なだらかな道を走っているだけだったらね、そこそこの広さの公道をただ走っているだけであれば、まあどのバイクでもなんとか乗れるよねっていうふうに、どのバイクでも用が足せるような使い方だったら、「みんな同じバイクだよね」っていうふうに言えるわけですよ。

ひとたびそれが、山道を走るだとか、新聞配達で使うだとか、長距離をまっすぐ、ただただスピード出して走るだとかってなった瞬間に、「同じバイク」って(ひとくくりにするのは)乱暴なんじゃないの、みたいな話になるわけじゃないですか。
それと同じことがやっぱり社会生活でも僕は起きてると思っていて。

僕が今の会社に入って営業職をやって、一回営業職を抜けてまた営業職に戻ってきたんですけど。
そういう「バイク理論」で言うと、お客さんと接していて、営業に対する戦略を立てたり、お客さんとのコミュニケーションの中で、こういう時にこういうふうに伝えたらいいなっていうことを考えたり、お客さんの言っていることを理解して、こういうことを知りたいんだろうなとか、そういったコミュニケーションっていうことで言うと、僕はかなり得意な方なんですよね。

26歳の時に今の仕事に入って、営業職をやりたいわけじゃないのに営業職に就いたんですよ。
営業をやったことなかったからね。
でも、入った時からほどなくして、僕は割と営業が得意なんだなってことがわかったんですよね。
ほかの人がなんで苦労しているのかがよくわからなかった。
営業に関して言うとね、なんか別に「普通にやってりゃ取れるんじゃないの」っていう。
なのに、なんで苦しんでるんだろう、みたいな感じだったんですよ、正直言うと。

これはやっぱり、例えば僕がカブでもハーレーでもいいですけど、仮にハーレーだったとすると、まっすぐ走るっていうのが、まっすぐ速いスピードで走るっていうのが営業にあたるところだったんですよね。
ただ、間にある細々した事務作業だとか、アップ調整だとか、細かいことをするパソコン作業でなにか資料を作るだとか、そういったことになっちゃうと、とたんに僕は能力を発揮できなくなっちゃったりっていうことで、波があるわけですよ。
でも、会社って一人ひとりに目を向けて、「あなたはこういうところが得意で、こういうところが苦手だから、もっとこういう生かし方をした方がいいよ」みたいな形で属人的にカスタマイズしてくれないんですよね。
カブなのに。

排気量の大きいマフラーを、マフラーじゃないか、エンジンを載せてね、マフラーなのかエンジンなのかわかんないけど。
そういう仕組みにしようとしたり、原付なのにリミッターカットして80キロぐらい出せるようにしようとするのが、いわゆる社会生活ってものだったりするんですよね。

じゃあ自分がどうやったらより良く生きていけるのかってことを考えた時に、例えばコーチングの理論だったりとかコンサルの人にいろいろ学ぼうってなったりさ。
そういうときに、自分の中の大きな目標、例えば1年後、5年後、10年後、自分はどういうふうになっていたいかっていう目標を大きく立てることが必要だよって大体言われるんですけど。
これはものすごい大事なことだと思うんですね。
やっぱり目標を立てると、そこに向かって走っていこうと思うから、自分のスペックを活かしやすくなるから、絶対必要なんですよね。

100メートル走だとわからずに、ただ走れって言われても、どっちの方向に走ったらいいのかわかんないから一生懸命走る気にならないじゃないですか。
でも、横並びに6人並んでて、100メートル先にゴールがあって、一番最初にゴールした方が勝ちって思った方が一生懸命走れるのと同じように、目標を立てて、そこをリアルに想像して、その一歩一歩、明日はなにをしよう、1ヶ月後はなにをしようっていうふうにスケジュールを立てていくっていうのはすごく大事なことなんだけれども。
それよりも大事なのは、そもそも自分がどういうバイクかを知ることだと思うんですよね。

わからないのに走っていても、そこに対する目標の筋道の立て方とか、具体的にどういうふうにやっていくとゴールにたどり着けるのかが、自分がハーレーなのかカブなのかがわからないんだったら、その目標を実行しようがないじゃないですかね。
アメリカのハイウェイをただただ走っていくのに、自分がカブに乗っているんだと思うのとハーレーだと思ってやるのでは、同じ道とは思えないぐらいやり口が違ってくるわけじゃないですかね。
カブだったら燃費がいいからさ、持ち金がそこまでなくてもいいかもしれないけど、ハーレーは燃費が悪いんだからちょいちょいガソリンスタンドに入らなきゃいけないけれども、逆に言うと、かかる時間っていうことを考えたら、同じ時間を見積もっていたのでは絶対採算取れないわけじゃないですか。

だから、同じ目標を10年スパンで立てるにしても、Aという人は最初の1歩、2歩進んでいくのは早いけど、あとの7歩はすごい時間かかる人かもしれないし、逆の人もいるかもしれないんですよね。
そこを解像度高く自己認識できるようになるっていうのが、目標を立てて、そこに向かって筋道をどうのこうのするってことよりも、よほど大事なことだなって僕は思うんですね。

僕が仕事をしていて一番救われたことっていうのは、そういった自己認識ができたことなんですよね。
やっぱりね、20代とかの頃はね、めちゃくちゃ落ち込んだんですよ。
まわりの人が当たり前にできているのに、自分ができないので。
そうすると上司には「お前は仕事に対して本気度が足りない」みたいなことを言われたり、「仕事なんだから、金もらってんだからもうちょっと集中しろ」って言われたりするんですよ。

お客さんをすっぽかしたりするとさ、「そんなの手帳に書いておいて、それをしっかりその通りにしてたら、すっぽかすなんてことはないでしょ」って言われる程度のことなんですけど。
自分にとっては、そういった細々したことをひとつひとつ正確にこなすっていうことが、他の人の何倍もしんどいことだっていうのがわかって、楽になったんですよね。

自分がすごく不真面目な人間なんじゃないかとか、ほかの人が草の根で努力してることをあんまりしない人間なんじゃないか、自堕落な人間なんじゃないかって。
そのぐらいの時期の時はね、ずっと自分のことを呪い続けたんですよね。
たまたま自分がしゃべったり、人の話を聞いたりするのが人よりも得意だっただけで、ほかの人が真面目に取り組んでるのを不真面目にやってるんじゃないか、みたいなことで。
休みの日も、注意されたことでずっと悩んでいたりしたんですよ。

それってすごいきついんですよね。
自分のひとつひとつやるミスみたいなものに対して、外から見てる人は「こんなミスするんだから、こいつ気にしないタイプだよね」って思うみたいだけど、自分ではすごい気にしてたりするからね。
でも、そういったこと(細かい作業など)が、自分は人よりも大変なんだってわかって。
じゃあ、そういったルールの中で、どういうプレゼンテーションをしていったら、外側の人に「こういう人間なんだね」って認めてもらうことができるだろうか。
その中でどうやって最大限の結果を出すことができるだろうかって。
自分がどういう乗り物に乗っているのかっていうのを理解した上で動けるようになって、初めてストレスが減ったっていうか、うん、そういうふうになったの。

もし今、自分がやらなければいけないことがあって、自分が立てている目標がうまくいかないな、なんて思っている人がいたら、それは、まず自己認識をするっていうこと。
自分を知る必要のある部分が大きいからなかなかうまいこと行かない、っていうのもあるんじゃないかなって思ったので、今回はそういう話をさせていただきました。

とはいえね、僕もね、いまだに結構ミスが多いですから。
うん、落ち込む。
落ち込むんですよ。
この歳になって、なんで、こんなことしでかすんだろうなって思うし。
でもね、昔に比べたらずいぶん楽になったってことがあるので。
あんまり自分の外側を見つめすぎるときついから。
自分の内側を見つめる時間も作ってあげるのがいいのかなっていうふうに思ったので、今日は、こんな話をさせていただきました。

はい、今日は、そんなところで終わりにしようかなと思います。
今回もありがとうございました。バイバイ。