オンライン喫茶 4th place
オンライン喫茶しゃびのオフなひととき(テキスト)

523.観客で居るのが苦手

今日話したいのは「観客力」についてなんですよね。

「観客力」なんて言葉はたぶんないと思うんですけど、お客さんっていう意味での観客に力って書いて、観客力。

僕は観客力がすごい低いんですよね。
これはなにかっていうと、例えば音楽ライブとかに行ったときに、めちゃくちゃノリノリでコールアンドレスポンスとかできる人いるじゃないですか。
ああいうのがね、僕はすごい苦手なんですよね。
お客さんとしての「いい振る舞い」みたいなのってあるじゃないですか。
その会場を盛り上げる振る舞いができるかどうかっていうか。

僕自身舞台に立つことが結構あるので、そういういわゆるノリのいいお客さんに何度助けられたかわからないわけですよ。
やっぱり、やってて一番やりにくいなと思うのは、腕組んで見ている人。
腕組んでむすっとした顔して見てる人、たまにいるんですよ。
で、そういうのはやっぱり印象として、舞台で演じる側としてはやりにくいタイプの人ではあるんですよね。
ただ、面白いのが、そうやって腕組んでむすっとしている人が、そのお芝居を見ていてあんまり面白くないって感じているかというと、そうとも言えなくて。
そういう人に限って「めちゃくちゃ面白かったです」って言ったりするんですよ。
一方で、めちゃくちゃノリ良くて、うわーって笑ってくれて、みたいな人が、すごくお芝居を楽しいと思ってくれていたかというと、そういうわけでもなかったりする。

だからこれって、観客が湧いてたからこのお芝居は当たってたんだなって捉えることもなかなかできないし、シーンとしていたらあんまり良くなかったんだなってわけでもないんですよね。
どういうお客さんが集まったかによって、お客さんの反応ってめちゃくちゃ変わるから、演者はお客さんの反応をちゃんと気にしてというか、お客さんに向けて演技をしなきゃいけないっていうのはあるんだけど、逆に引っ張られすぎちゃうとあんまり良くないんですよね。

盛り上がってるからといって笑いを取りに行ってしまったりするのも良くないし、シーンとしてるからといって慌てちゃって、どんどん先に急いじゃう、「走っちゃう」って言うんですけど。
嫌じゃないですか、受けてないし、ずっとやるの。
だから、演技がどんどん早くなって、わけわかんなくなってっちゃうっていうのも、実際見てる人は(シーンとしていても)楽しんで見てるかもしれないから、(走ってしまうのが)良くなかったりする。

お客さんとしては、ほどよく会場を盛り上げてくれたりすると、(舞台上の)パフォーマンスとしても良くなりやすかったりっていうのがあるんですよね。
そういうことが重々わかってるから、自分としても決して、腕を組んでむすっとして見ないようにしようと。
できるだけ会場と一体になってお客さんっていう役割をきちんと全うしたいなと思うんだけど、あのね、苦手なんですよね。

だから、逆に言うと、舞台に立ってお芝居をするのが苦手っていう人はもちろんいるわけじゃないですか。
お芝居とは言わず、人前でなにかをしゃべるのが苦手とか、そういう人もいるわけじゃないですか。
緊張しちゃうとかね。
もっと言ったら、カラオケで歌うのも苦手とかさ、そういう人もいるわけじゃないですか。
で、自分の場合はそれは苦手じゃないんですよ。
人前でいくらだってしゃべれるし、急に振られたって大丈夫なんだけど、逆に言うと、誰かが人前でやっているのを観衆として見てるのが苦手なんですよね。
なんかこう、気の利いた振る舞いができないっていうか。

この間あるライブを見に行った時に友人がね、一緒にいたんですよ。
その友人はプロ観客なんですよね。
めちゃくちゃホスピタリティ溢れる反応をする人なんですよ、その友達はね。
ちょっと合間に休憩時間があったから、「お客さんとして振る舞うのが苦手なんだよね」って話をしたら、その人は自分以上に演者としてのキャリアの長い人で。
ちっちゃい頃から人前に出てダンスを踊ったりとかっていろんなことをやってたんで、見ている人がどういう状態だったら演じる人が演じやすいかってことは重々わかってるんで、そういうふうにやってるんだよって言ってたんですね。
それは僕も共感するんですよ。
でも、できない。

なんで自分はそれができないんだろうか。
お客さんとして適切な振る舞いができないんだろうか。
どういうふうにやったらいいんだろうな、みたいなのはわかってるんですよ。
手を叩いたりさ、あるじゃない。
こっちが合いの手を入れる歌があったら、それを入れたりさ、なんかそういうノリみたいなのあるじゃない。
笑うところはちゃんと笑って、みたいな。
わかってるんですよ。
わかってるんだけど、できないわけですね。

これ、なんでできないのかなって思った時に、ひとえに自意識なんですよ。
自意識過剰になって、自分がノリノリになっているのを外から見ている自分みたいなのがいて、「なんかそれ、恥ずかしくない?」みたいな感じが自分の中になっちゃって。
でも観客なんだからさ、「観客の中のひとりの自分」を見てる人なんかいるわけないのに、それをすごい気にしちゃって、できないっていうのがあるんですよ。

でも僕、舞台に上がった時って、自意識があまり発動しないっていうか、自意識の取り外し方っていうのを覚えてる。
覚えたっていうか、心得たんですよね。
芝居をしていく中で、自意識に駆られて芝居をすると全然いい芝居にならないんだっていうのもわかってるし、こういうふうにすると自分は自意識が取り外せていい芝居ができるし、やっていて自分も気持ちがいいっていうのがわかってるから、舞台の上に出た途端、パチっとこう、切り離すっていうのはわりとできるんだけど。
日常生活で自意識が低い方ってわけじゃないから、自意識が取り外せないと、人並み外れて自意識過剰な人になっちゃうんですよね。

自分の場合はそうで、例えば友達と話している時とか、こうやって音声配信している時とかって、そのお芝居の経験があったり、人前でなにかをするっていうのが比較的昔から多かったというか。
僕、営業なんでそういうのが多いんで、そういう時にカチッとするのはできるんですよね。
なにかの本番とかじゃなくてもね。
ちょっと誰かとしゃべる時とかも、自意識みたいなものをカチッと取り外したりするんだけど、ひとたび僕が聴衆になった時に、なんかもうやたらと自意識過剰なんですよ。

例えば、もっとライトな例で言うと、全校朝礼みたいなのって学校の時あったじゃないですかね。
校長先生がしゃべったりするやつね。
ああいう時も、自意識過剰になるんですよね。
「おはようございます」って、みんなで言うときの「おはようございます」って言ってる自分みたいになっちゃうんですよ。
だから、みんなでひとかたまりの群衆みたいになったときに、自分は自意識に駆られやすいんだなっていうのはね、すごい思うんですよね。

これね、多くの人は逆なんですよね。
群衆の中にいる時なんて誰も自分のことを見てないんだから、そんなに自意識過剰になることもないけど、人前に立った途端に人に見られていることが明らかになるわけだから、それはすごく自意識に駆られるよねってなる方がおそらく一般的なんだけど、僕の場合、逆なんですよね。
それは、人前に立っている時って、演劇に限らず、「しゃび」というひとりの人間をある種演出してるところがあるんですけど、みんなの中で一体になった途端に、なんかこう、しゃびという人間を演出することができなくなっちゃって。
「群衆の中に紛れ込んでるしゃび」みたいになっちゃうんですよね。
で、そうすると自分は自分のままになっちゃうと。
自意識が働いちゃうので、たぶんライブで盛り上がりをやるのが苦手なんですよね。

うん、だから、僕はなにかを演じているんだと、演じている中で自分を出しているんだっていうことを、ある種のエクスキューズにして自意識を取り外している、ある種、防御をまとって自意識を外しているところがあるから、身にまとえないって思っちゃうと、難しいんでしょうね。

で、そんなことをね、この間、ライブを見ながら考えてたら、その友達が「自意識は取り外せないんだよね」と。
「自意識は取り外せない」という言い方って、ちょっと抽象的な言い方なんだけど。
友達はもともとそういったことを、人前に立つことをずっとやってるから、そのことの意味するところがすぐにわかってくれて。
その人が言うには「それはちょっと技術が必要かもしれないね」ってことだったんですよね。
お客さんとして知識を取り外して、お客さんとしてのエンターテインメントをやるには、それはひとつ技術が必要かもしれないねっていうふうに言っていて。
たぶんその人も人前に立つ側なので、聴衆としてその場にいるっていうのが得意な方ではもともとないんじゃないかなと思うんですよね。
人前に立つ方が得意なんじゃないかなと思うんだけど、でも経験上、お客さんとしていい役割を演じるっていうことは大切だと思うから、後天的にそれを身につけてできるようになったんじゃないかなっていうふうに思うんですよ。

だから、逆の人はね、全然気にしなくてもできると思うんですよね。
自意識がそこで働いてないんであればね。
自分の自意識が働いちゃう時、多くの人の場合は、もしかしたら人前に立つ時の方かもしれないんだけど、これって、単純に恥ずかしいとか、失敗したらどうしようとか、不安だみたいなところにフォーカスしてしまうと、あんまり解決できなくて。
どうやったら自意識が取り外せるのか、自分を見ている自分みたいな、誰かに見られている自分っていうことを強く意識してしまうと恥ずかしくなったり、不安になったり、失敗したらどうしようってなっちゃうので、それをどうしたら取り外せるのかっていういい考え方でやると、前に進めるような気がしますね。

僕の場合は、友達が言った「それは技術が必要かもしれないね」っていう、その技術を習得することによって、お客さんっていう役割を演じられるようになって、慣れもあるかもしれないですよね。
で、気持ちよくお客さんとして、ホスピタリティ溢れる観客という役割ができるようになるのかな、なんていうふうにね、その話を聞いて思ったので、今日はそんな話をしてみました。

中にはね、僕と同じようなタイプの人もいると思うんですけど、自分が自意識をすごく感じてしまってうまくパフォーマンスが発揮できないっていうシチュエーションがある場合は、おそらく今話したようなところが原因になっている可能性が高いので、うまくやりたいなって思った時には、そういったことを意識して改善してみるといいのかな、なんて思います。
僕もね、プロの観客になれるように頑張ります。

ということで、今回は終わりにしようかなと思います。
今回もありがとうございました。バイバイ。